====== 数百年後の地球にはどんな人々が暮らしているのだろう ====== 先日、「2300年未来への旅」という映画を観た。 これは高度な人工知能によって人口動態が完璧にコントロールされた未来社会を描いた物語だ。 その未来の人々は、外界から隔離されたドーム型の施設の中で楽しく生活している。 ドームの人々は生まれた時から手のひらにクリスタルを埋め込まれ、加齢とともにその色が変化していく。 30歳になると転生の儀式という名の公開処刑によって爆破され、その一生を終える。そして処刑された人の数だけ、人工授精によって新しい命が生まれるというサイクルだ。 その儀式に選ばれるというのは、ドームの中の人々にとっては非常に名誉なことで、誰もその先にある真実を知らない。 1970年代の作品ということで、登場人物は選りすぐりの美男美女ばかり。 透明なパイプの中を通る車や、風景と絶妙にマッチしている未来的な電飾は、こんにちのSF作品にも影響を与えているポイントと言っていいだろう。 主人公たちが外界を探索するシーンでは、植物に覆われて風化したワシントンDCの街並みが映し出される。 リンカーン記念堂にあるリンカーン像の前で、主人公たちは自分たちに似ている人々がかつてここに居たことを知る。 それは老いを受け入れながら、アメリカ合衆国を支えた人々。多様な価値観に溢れる社会の中で懸命に生きた人々のことだ。 朽ちたアメリカ合衆国議会には、猫に囲まれて暮らす一人の老人がいた。 彼の代にはすでにアメリカは滅亡していたようで、部屋に置かれたぼろぼろの絵画に描かれている歴代大統領の存在すら、人々の記憶から消えてしまったようだ。 そして主人公たちは老人から、赤ん坊はどうやって生まれるかということや、愛し合った夫婦はやがて土に還ること、そして人は30歳以降も生命を謳歌できるということを知った。 これらの事実をドームの人々に伝えるために、主人公たちは老人を連れてドームへ戻ることになる。 最終的にドームの人々は老人の存在によって認識を深め、彼らの新しい人生が始まるその予感とともに物語は終わる。 ---- この話の中で2つの疑問が浮かんだ。 作中のアメリカ人たちはいつ、どのようにしていなくなってしまったのだろう。そしてあのドームが人工知能によって管理されるようになったきっかけとは? それを示すヒントとして、主人公たちがドーム内に打ち捨てられた聖堂を探索する直前のあるシーンに着目した。 聖堂の入り口の壁には一部消えかけた文字で「CATHEDRAL PLAZA 2025 R.D.」と書かれている。R.D.の部分はR.O.かもしれないが、その前の年代を示す数字は2025、つまりこのレビューを書いている年だ。 もしかしたら、今年に何か大きなことが起きるのかな?