これまで複数の遺伝子検査機関に自身の検体を提供し、その結果を受け取ってきた。
その検査機関とは、MYCODE、GeneLife、MyHeritageの三つで、MyHeritageから自分のDNAデータをダウンロードして他社にアップロードしたケースを含めると、全部で七か所の検査機関にお世話になっていることになる。
遺伝子検査を受けようと思った一番最初の動機は、自分のルーツを知りたかったんだ。
それについては、先に挙げた検査機関のサービスを受けたことである程度解決した。
簡単に言うと、僕を構成するほとんどの要素は日本由来だった。そして遺伝子学的に見た日本民族というのは、縄文人を始めとして、東南アジアやシベリア、インド、古代中国、中央アジアなどの、アジアのほぼ全域の人たちが遥か昔にミックスされた結果誕生した人種のことだ。
そのことを知った僕は、以前よりも前向きな気持ちになれた。
そして次に気になりだしたのは、健康に関することだ。
昨今のメジャーな遺伝子検査の手法では、個人の様々な特徴の他に、がんやアレルギーなどの疾患リスクもある程度分かるようになっている。だがそれらは全ての遺伝子情報のほんのわずかな部分を解析して得られた情報であり、さらに色々なことを知るには、より多くのゲノムを解析する必要があった。
近年では人の全ゲノムを解析する手法が確立され、数年前までは非常に高額だった全ゲノムの検査サービスが10万円を切る価格で提供され始めている。これは非常にすごいことだ。人体の設計図を理解できれば、治療が難しいとされている病を治せるようになるかもしれないし、今までの一般的な検査では発見できなかった疾患のリスクに気付くことができ、その病に対して先手を打てるようにもなるだろう。
個人の特徴や疾患リスクについては、GeneLifeの解析である程度の情報は得ていた。
その結果を踏まえて、僕はそれ以上のことを知りたかった。
僕は生まれた時に新生児マススクリーニング検査をスルーされた疑いがあり、そのことがずっと引っかかっていた。もし何らかの遺伝子疾患があればそれを把握しておきたいし、僕の体は一般的な男女とは異なる発育の仕方をしたから、いつかこれらの謎を解き明かしたいとずっと思っていた。
そこである日、それについて検査をしてもらうために総合病院の内科に行った。するとそこの医師はこのように言った。
「その検査はうちでは扱っていない。もしどうしてもやりたいなら、大学病院で賄賂を払えばやってもらえるだろう」
現役の医師がこんなことを言うとは。僕はそれ以上の行動を諦めざるを得なかった。
僕は真実を知る準備はいつでもできていて、自分の体に関する疑問を可能な限り払拭したいと願っている。
自分のことを嘘偽りなく堂々と人に説明したい。
そう思い続けて、ついに最近、その願いを叶える機会が巡ってきたんだ。
全ゲノム解析の候補に挙げた検査機関は、GeneLifeとGenex。
以下は2024年8月現在の企業情報だ。
GeneLifeのほうは検査キットの在庫が限られているらしく、受けたい時に申し込めないこともあるが、検査結果をアプリで確認でき、医療従事者によるオンラインカウンセリングもサービスに含まれている。このカウンセリングは検査結果を確認するためにはどうやら必ず行う必要があるらしく、コミュニケーションが苦手な人にとっては少し高めのハードルのように感じられた。
また、GeneLifeの全ゲノム検査を受けることで、現在同社が展開している全ての検査サービスの結果を一度に受け取ることができる。初めてこの会社の検査に申し込むという場合であれば、費用面では多少割安という考え方もできるかもしれない。
次にGENEX。こちらは比較的新しい新興企業で、祖先解析や親族マッチングなどのサービスは行っていないが、全ゲノム解析に特化したサービスを展開しているため、費用もそれに見合った価格となっている。
検査結果は郵送やPDFファイルで受け取ることができるらしく、もし医師に疑わしき遺伝的疾患リスクについて説明したいという場合に、役立つ資料となりそうだ。また、カウンセリングは顧客の希望によって行われるため、そうした面でのストレスも最小限で済みそうだ。
少し考えた結果、GENEXに検査を依頼することにした。
それで昨日検査キットの購入を済ませ、今はキットの到着を待っている状態だ。
果たしてうまくいくだろうか。今から楽しみだ。