2026年4月29日の本日、飼い猫しめじ(通称Cちゃん)の埋葬を済ませた。享年12歳だった。
もともとCちゃんは持病持ちの猫で、若い頃は鼻炎や鼻詰まりの症状で動物病院にお世話になっていたことがあった。また、何年か前に原因不明の目の怪我を二度負い、結果的に両目を障害された。それでもある程度目は見えていて元気に過ごしていたのだが、ここ数か月ほどは食欲不振のことが多く、吐く回数も増えていた。
そのCちゃんが二週間前あたりから急に元気がなくなり、変わった鳴き方をした後に食べたものをすぐ吐くようになった。そこには緑色の胆汁が混ざっていたり、水分が泡のようになっていたり、何も吐くものがない時はごく少量の血が出てきた時もあった。やがて固形物を近付けても口をつけず、時折水の入った器の前に行きペロペロとする仕草をするだけになった。
そのようなCちゃんの様子を見た僕は、いよいよの時が迫ってきたことを悟った。
僕はこれまでに多くの猫と共に過ごしてきて、彼らの死期を何度も見ている。中には動物病院で延命処置をしてもらった子もいたが、間もなく死ぬことが分かっていながらそれをしてもらうことは、僕にとってはあまりにも辛く可哀想な時間に感じられた。だから僕は今回、Cちゃんを動物病院へ連れて行かなかった。
Cちゃんが何も口にしなくなってから10日ほどの間、僕はCちゃんの顔や体を拭いてブラッシングをし、目や鼻に詰まっていたものを綺麗にした。Cちゃんの体温は冷たくなっていったが、定期的にCちゃんに声をかけたり歌を歌ってやるなどして、なるべく普段通りに接していた。
また、もしかしたら僕の手からなら何か食べてくれるかもと思い、指に水やちゅ~るを少しつけてそれをCちゃんの口元に少し塗ってみたが、Cちゃんは自身の口元を軽く舐めだけで、自発的に飲食をすることはなかった。
それでも高いところに上がりたがったり、人のいるところにしばしばやって来た。亡くなる3日ほど前の夜には久々に僕のベッドに上がってきて、僕の脇の下辺りでしばらく一緒に寝ていた。
また、これも亡くなる3日ぐらい前のことだが、僕が入浴中にCちゃんが風呂場の外で鳴いたので扉を開けたら、風呂場に入ってきて出窓のところに上がり、湯船の蒸気を浴びていた。Cちゃんがそういうことをするのは初めてだったので、余程温まりたかったんだなと思った。
この間もCちゃんはトイレできちんと用を足すことができ、粗相は一度もしなかった。
亡くなる前日には、Cちゃんから独特の臭気を感じるようになった。それは歯槽膿漏の人と面と向かって話した時のような臭いに似ていて、布に臭いが移った時には野菜を腐らせたような臭いにも感じられた。また、Cちゃんのケアをした後に手を洗ってもその臭いが取れなかった時があって、その時はしばらく置いた生ごみのようなツンとしたような臭いを自身の指から感じた。
そして、歩き方が著しくヨタヨタとした感じになり、排尿や鳴く回数が増えた。これは以前飼っていた猫が腎不全で亡くなった時の終末期とよく似た行動だ。それを思い出した僕は側にいた母に、「そろそろだから(Cちゃんの)好きにさせておくように」と伝えた。
その夜、Cちゃんはコタツにあたっていた母の膝の間でうっとりとしていた。僕はCちゃんの頭を撫でたり、前にしょっちゅうやっていたように軽く頭突きをしてスキンシップをした。
やがて明かりが消えて、コタツにあたっているのはCちゃんだけになった。僕が22時過ぎ頃にCちゃんに「おやすみ」と挨拶をすると、Cちゃんは僕のほうに少し顔を動かした。Cちゃんが窒息しないように、コタツカバーはめくったままの状態にしてその日は寝た。
翌日、コタツの中を確認した僕は、独特の臭気を感じた直後にCちゃんが伸びたような姿勢で亡くなっていることに気付いた。
手袋をはめた後にCちゃんを中敷きごとコタツの外に出して、呼吸や体の状態を確認した。Cちゃんはすでに死後硬直を起こしていて、体勢を整えることは困難だった。
僕はCちゃんの体を慣れ親しんだ布で包み、サンルームに一時安置した。そして朝食を済ませた後に、Cちゃんの新しい家を作るべく庭に出た。
Cちゃんの埋葬場所に選んだところには柿の木の切り株があったので、まずはそれを撤去するところから始めた。撤去が完了したのは午後2時ぐらいで、そこでようやく深く掘った地面にCちゃんを置くことができた。Cちゃんは母によって薄絹のような淡い色の布に包まれており、そこには2羽の折り鶴が入っていた。Cちゃんがゆっくり眠れるように土の布団をかぶせて、その上に目印の石を置いた。
こうしてCちゃんの引っ越しは完了した。
いつか必ず起きることが、思っていたよりも早く訪れた。
それでも戸惑いや悲しさや寂しさをほとんど感じずに冷静に全て終えることができたのは、あらかじめ覚悟をしていたからだろう。
動かなくなったCちゃんには、別れの言葉ではなく労いの言葉をかけた。
昨日までの状態とは変わってしまったけれど、あの場所に行けばいつでもCちゃんに会える。
夏が来るまでに、Cちゃんの新しい家の周りに鮮やかな花を植えて、色んな色の花の種を蒔くんだ。
そうすればずっと綺麗なまま、一緒にいられるよね。