バラの交配は意外と簡単だ。特にバラが好きな方にとっては、世界で一つだけの花を創る楽しみを実際にやりながら感じられる。
そしてこの交配の過程を通じて、バラのことをもっと好きになったり、植物を通じて心の豊かさを育む機会を得ることができる。
そういうわけで、バラの交配について簡単に解説していく。
バラは両性花(雌雄同体)であるため、おしべから出る花粉と、めしべを合わせれば実を得られるチャンスがある。
しかしそれらは必ずしも結実するわけではない、実を収穫するには、種子親♀の稔性(交配を成功させるための性質)の状態が大部分を占め、花粉親♂の稔性がその後に続く。つまり人間と同じで、母体がしっかりしていれば実も最終段階まで成長できる可能性が高まるということだ。
交配に最適な時期は、春の一番花が咲くころから初夏まで。
冬の間にエネルギーを蓄えた春一番花~二番花、または、できるだけ太いシュート上の花を選ぶとよいだろう。
成功率を高めたければ、樹勢があり葉が綺麗なまま十分に茂っていて、夏バテしにくく、交配実績のある品種を種子親にするのがおすすめだ。
また、一枝にヒップを複数残すと株のエネルギー消費がそれだけ多くなるため、十分に成長していない株では少数の交配に留めておくとよい。
受粉後も黒星病やうどんこ病などを早期に抑えて葉をできるだけ残し、実の収穫まで健康な株の状態を維持するようにしよう。
花粉親の場合は、基本的に花粉が出ればいつからでも使える。
花弁数の多い八重咲きでは、おしべの部分が花弁に変化しており、やや花粉を採取しにくいことがある。しかしそれでも花粉が出るのであれば、挑戦してみる価値はあるだろう。
おしべ側
花のおしべをピンセットやハサミで採取して適当な容器に保存する。この時におしべが雨などで湿り気を帯びている場合は、密閉しておくとカビが生えることがあるため、容器の蓋を開けてしばらく乾かしておくとよい。
1~2日経つとおしべの葯から黄色い花粉が出てくるので、それを交配に使う。
めしべ側
花のツボミが開き始めたら、花弁とおしべを全て除去し、めしべの部分にティッシュなどの適度に通気性のある覆いを被せて1~2日置く。
交配中も花を楽しみたい場合は、花弁を付けたままおしべだけを除去して、覆いを被せずに1~2日置く方法もある。こちらは最も手軽だが、ミツバチなどの虫が他の花粉を運んできたり、雨風の影響によって交配の成功率が変化する場合がある。
受精させる
1~2日経過したら覆いを外し、めしべの状態を確認する。
めしべが緑色からほのかな黄色に色づいて、湿り気を帯びて花粉を吸着するようになった時が交配のベストタイミングだ。
綿棒や筆に花粉をつけて、化粧をするように一つ一つのめしべの先端にポンポンとつけていく。そうやってめしべが全体的に黄色くなったら交配完了だ。無事に結実して実が大きくなるのを待とう。
一般的に、めしべよりも花粉のほうが寿命が長いため、先におしべを採取しておくとタイミングを合わせやすい。一度の交配で花粉がうまくつかない場合は、翌日も花粉をつけてみよう。
交配後はその枝にタグやリボンをつけておけば目印になる。余裕があればメモなどに記録をつけておくとよいだろう。
受精に成功して結実すると、一か月以内にガクが上がり、花托(実ができるところ)が膨らんでくる。その膨らみは二か月が経つ頃には顕著になり、品種によってはガクが外れる。そしてさらに数か月かけて実の色が「緑⇒黄緑色⇒橙色⇒赤色」と変化していき、橙色から赤色になりかけた頃に収穫の適期を迎える。
品種や気温によっては完全に赤くならず、緑色を残したまま種子が成熟することもあるため、果実の色だけよりも交配日からの日数を目安にするとよい。
交配から収穫までは大体四か月だ。霜や自然落果が始まる前に実を収穫しよう。

交配から二か月近く経ったキングの自然受粉の実。
成熟の過程でシベの部分が自然とクリーニングされる個体は比較的残りやすい。
仮に5月下旬に交配した場合、一般的に収穫の適期は9月下旬~10月上旬頃となる。当然ながら品種や地域によってこれより早かったり遅かったりすることがあるので、交配から収穫までの日数を計算し、実の状態を観察して、収穫の適期を見極めることだ。
また、種子の成熟は実全体の成熟よりも早く進むため、四か月を待たずして終わってしまった実であっても、種子内の胚の発達が完了していれば発芽することがある。そのような種は四か月成熟させた種よりも発芽率が高いことがあり、休眠打破に必要な期間も短い傾向にある。
以下はAIによる調査結果。
ハイブリッド・ティーを用いた研究では、交配後21日という非常に早い段階の未熟種子・胚からin vitroで発芽しており、28日では40%以上の発芽が得られる条件もありました。別の研究では、胚そのものは15日後ですでに形態的に完成し、30日後には「完全に発達した種子」が確認されています。
ジャーナルポップ
さらに興味深いのがハマナス Rosa rugosa の実験です。交配後60日、90日、120日の種子を比較したところ、無菌培養条件では60日後の種子が61.57%発芽し、むしろ90日後の30.03%、120日後の7.29%より高い結果でした。これは「120日経たなければ発芽能力を獲得しない」という意味では全くないことを示しています。ただしこの実験は硫酸処理・GA₃培地・低温処理を組み合わせた無菌培養なので、その61.6%をそのまま通常播種の発芽率と考えることはできません。
SCIRP
| 交配後 | 種子・胚のおおよその状態 | 発芽可能性 |
|---|---|---|
| 0~2週 | 胚・胚乳形成中 | 通常は困難 |
| 約15日 | 一部の交雑バラで形態的に完成した胚が確認 | 胚培養なら可能性あり |
| 約21~30日 | 胚がかなり完成、種子構造も形成 | 組織培養では発芽可能 |
| 約45~60日 | 種子がかなり充実、種皮・果皮が硬化 | 条件次第では普通の種子として生存可能 |
| 60~90日 | 生理的成熟がかなり進む | 発芽能力を持つ可能性が高い |
| 90~120日 | 一般的な採種期 | 通常の育種では安全な収穫期 |
分かりやすい例では、交配後数日で花首が茶色くなり、花托がしおれてくる。この場合は両親のどちらかまたは両方の不稔性が影響していることが多く、一般的に結実しにくいとされている三倍体や五倍体が関係している例も少なくない。
また、交配後一か月以上経ってから上記のようになり失敗することもある。種子親が病気などで大きく葉を落としたり、同じ枝に花をつけるなどして実にエネルギーが届かなくなると、株は自然と実の成長を停止させる。あるいは、花粉親との相性が良くなかったり、親のどちらかまたは両方に不稔性が隠れていた場合にも成長がストップすることがある。
さらに、台風や大雨などの悪天候によって、実が枝から離れてしまうこともある。
残念だけどそれも運命と思い、次回のチャンスを待とう!